○天草広域連合集団救急事故の救急救護活動要綱

平成13年7月2日

消防長訓令第21号

(目的)

第1条 この要綱は、天草広域連合救急業務規程(平成13年消防長訓令第20号)第21条の規定に基づき、地震等の自然災害及び自動車等の衝突、転落、船舶の転覆、航空機の墜落事故、ガス爆発その他の災害又は事故で、局地的かつ短時間に多数の傷病者が発生し、通常の出場体制では対応できないもの(以下「集団救急事故」という。)を対象として、救急隊等の効率的な運用と関係機関の密接な連携を保持し、総合力をもって迅速かつ安全に傷病者の救出救護を図ることを目的とする。

(運用の基準及び対象災害等)

第2条 この要綱の運用及び対象災害等は、次表のとおりとする。

運用基準

対象災害等

1 傷病者が10人以上発生した場合

2 救急隊3隊以上を集中的に運用する必要がある場合

3 その他消防長が必要と認める場合

1 地震等の自然災害

2 航空機、自動車等の大規模交通事故

3 危険物、ガス、ラジオアイソトープ、毒劇物の爆発、流出、漏えい等の事故

4 大規模な建物、工作物の倒壊事故

5 その他の人為的原因又は自然現象に起因して集団的に傷病者が発生するもの

(活動の原則)

第3条 現場活動においては、警察、付近の医療機関その他の関係機関と連絡を密接にし傷病者の効率的な救護に当たるとともに、救急活動については、傷病者の適切な選別(トリアージ)を行い、重症者を最優先として必要な応急処置を施した後、それぞれの傷病者に適応した医療機関へ迅速かつ安全に搬送することを原則とする。

(出場区分及び他機関への応援要請等)

第4条 消防本部は、事故の通報内容又は現場報告等によって集団救急事故と判断される場合は、消防長が別に定める集団救急事故時における救急隊の出場基準及びその他の隊の出場基準に基づき、直ちに出場指令又は応援要請を行うものとする。

(最先着隊による措置)

第5条 最先着隊は、後続隊が到着するまでの間、次の順位に従い必要な措置を行うものとする。

(1) 災害の状況把握と報告

 災害状況の速報(災害発生場所、発生原因、傷病者及び要救助者の数等)

 二次災害発生危険の有無の確認

 必要とする隊、資機材の応援要請(後着救急隊の集結場所)

(2) 傷病者の救出救護

(3) 災害(事故)現場における警戒区域の設定及び後着救急隊の進入、退出路の確保

(4) 状況に応じた応急救護所の設定

(現場指揮本部)

第6条 災害(事故)現場の状況により現場指揮本部を設置するものとする。

(1) 設置基準等

 原則として第2出場時に設置するものとする。

 現場指揮本部には、「救急現地本部」の標旗を掲示するものとする。

(2) 設置場所

現場指揮本部は、次の事項に留意して災害現場で最も適した場所に速やかに設置するものとする。なお、他の関係機関が現場指揮本部を設置した場合には、合同指揮本部の設置について他の関係機関に要請するものとする。

 現場全体が把握でき、かつ、消防部隊の集結が容易な場所

 応急救護所との連絡が容易な場所

 二次災害のおそれのない場所

 通信障害が少ない場所

 関係機関との連絡、調整が容易な場所

(3) 編成及び任務

現場指揮本部の編成と任務は、別表第1及び別表第2のとおりとし、活動区分に応じて担当指揮者を指定する。なお、必要に応じて活動方面に別に指揮者を指定することができる。

(4) 必要な資機材の保管及び搬送

現場指揮本部の設置に必要な資機材は、別表第3のとおりとし、消防本部の搬出に便利な場所に保管しておき、資機材搬送車等で搬送する。

(5) 災害速報

現場指揮本部は、本部設置後速やかに災害状況を把握し、災害速報用紙(別記様式)に記入し、指令室に報告するものとする。

(6) 災害記録

現場指揮本部は本部設置後、速やかに災害記録を消防長が別に定める災害記録用紙により記録するものとする。

(応急救護所)

第7条 傷病者の程度及び状況により応急救護所を設置するものとする。

(1) 設置基準等

 原則として第2出場時に設置するものとする。

 応急救護所には、「救護所」の標識を掲示するとともに、救護所員は腕章で表示する。

(2) 設置場所

応急救護所は、ロープ等によって区域を明示し、重症度分類によって傷病者の搬送位置を指定しておくものとする。なお、次の事項に留意して災害現場に最も適した場所に設置するものとする。

 現場指揮本部との連絡が容易な場所

 二次災害のおそれのない場所

 出場隊の進入、退出路が別系統で確保が可能な場所

 群衆の混乱による活動障害がなく、地形平坦で広い場所

 通信障害が少ない場所

(3) 編成及び任務

応急救護所の編成と任務は、消防長が別に定めるとおりとする。

(4) 必要な資機材の保管及び搬送

応急救護所の設置に必要な資機材は、消防長が別に定めるとおりとし、消防本部庁舎の搬出に容易な場所に保管しておき、要請に応じて資機材搬送車等で搬送する。

(5) 医師会の医療救護班の出動要請

医師会の医療救護班の出動要請は消防長が別に定めるとおりとする。

(6) 医療救護班との連携

医療救護所の指揮者は、医療救護班が現場に出場した場合は、早期に連絡をとり密接な連携のもとに行動するものとする。

(7) トリアージ(傷病者の重症度による分類)の方法と傷病者の取扱い

 トリアージの方法

トリアージは、緊急度分類に基づき選別することとし、この結果を消防長が別に定めるトリアージタッグ(傷病者伝票)により表示する。なお、トリアージタッグの選別及び記入に当たっては、救命効率の向上を図るため所要事項の記入について、とりあえず知り得た範囲で記入し、時間の浪費をさけること。

 トリアージタッグの処理

トリアージタッグ(3枚複写)の処理については、消防長が別に示す順序で行うものとするが、所要事項の記入については、おおむね以下の要領で行う。

トリアージタッグ

担当

記載事項

1枚目

受付分類班

搬送救急隊

性別、程度別を記載のうえ、救急隊へ提出する。

氏名、年齢、収容医療機関、搬送救急隊名を記載のうえ、救護活動指揮者へ提出し、搬送する。

2枚目

搬送救急隊

搬送先医療機関において、傷病者及び1枚目の未記入事項について調査記載して持ち帰り、救護活動指揮者へ提出する。

3枚目

病院担当

搬送先医療機関において、傷病者に表示してあるトリアージタッグに未記入事項を調査記入して持ちり、消防本部で保管する。

 緊急度分類による搬送医療機関の決定

緊急度分類による搬送医療機関の決定は、以下の原則によるものとする。

(ア) 第1順位………救命救急センター等の第3次医療機関へ搬送するものとするが、心肺そ生法を継続している傷病者等緊急に救命措置を必要とするものは、直近の医療機関へ搬送し、応急医療措置を受けた後適応医療機関へ搬送する。

(イ) 第2順位………総合病院等の第2次医療機関へ搬送する。

(ウ) 第3順位………第1及び第2の傷病者の数と医療機関の収容能力を考慮し、その他の適応医療機関へ搬送する。

(エ) 第4順位………原則として搬送活動は行わない。

(活動隊の編成と任務)

第8条 各活動隊の編成及び任務は、次のとおりとする。

(1) 救助隊

 ポンプ隊又は救助隊がこの任務に当たる。

 傷病者の救出、救護及び二次災害の防止に当たる。

 重篤、重症者の救出に当たっては、救急隊及び医療関係者と連絡を密にして行う。

 救出、救護完了後は現場指揮本部長の指揮下に入り、情報収集に当たる。

(2) 担架隊

 ポンプ隊又は消防団員等がこの任務に当たる。

 歩行不能な傷病者は、迅速、安全に応急救護所まで担架搬送し、歩行可能な傷病者は、介添歩行又は避難誘導を行い受付分類班を介して指定の場所へ収容する。

 要救助者等の状況を救護活動指揮者に報告する。

 重篤、重症者を搬送する場合は、医療救護班の指示を求め搬送する。

(3) 病院搬送隊

 出場救急隊がこの任務に当たる。

 隊長は、現場に到着した時、救護活動指揮者に到着の報告をし、必要な下命を受ける。

 現場は著しく混乱することが予想されるので、指揮者の命令により統制ある行動をとることを原則とする。傷病者の搬送に当たっては、応急救護所の救急車運用班との連絡を密にして行う。

 隊長は、搬送開始前に傷病者に表示されているトリアージタッグに必要事項を記入し、1枚目を切り取り救護活動指揮者に提出する。

 傷病者を医療機関へ引き渡した後は、速やかに応急救護所へ引き返し、2枚目を提出するとともに、救護活動指揮者に当該医療機関の収容状況等の情報について報告する。

(4) 警戒支援隊

 主として消防団員がこの任務に当たるものとする。

 ロープ等を使用して警戒区域を設定し、立入りの制限を行う。

 必要に応じて災害現場及び傷病者搬送路の照明作業を行う。

 救助隊の行う傷病者の救出、救護の支援及び二次災害の防止に当たる。

 その他、現場指揮本部長の命令に従い活動するものとする。

(消防団の活動要請)

第9条 第2出場以降に、消防長が別に定める出場区分表により出場し、現場指揮本部長の命令を受けて担架隊、警戒支援隊等の任務に当たるものとする。

(通信)

第10条 通信連絡体制の万全を期すため、特別の事情を除き消防長が別に定める消防通信連絡系統図に基づき行うものとする。

(関係機関との連絡)

第11条 消防相互応援協定に基づく隣接消防本部及びその他の関係機関の連絡先は、消防長が別に定めるとおりとする。なお、自衛隊の災害派遣要請は、熊本県知事(防災消防課扱い)を通じて行うものとし、医療救護班への出動要請はできる限り衛生部長を通じて行うものとする。また、連絡手段の確保は有線通信を原則とするが、回線途絶時には防災行政無線を利用して行う。

(報告及び広報)

第12条 災害(事故)現場での報告及び広報は、次のとおり行うものとする。

(1) 報告

現場指揮本部は、各班及び各活動隊の隊長から定期的に情報をとりまとめ、逐次指令室へ報告するものとする。

(2) 広報

住民に対しては、状況に応じて行うこととし、報道関係者に対しては、速報中間、まとめ等段階的に発表する。なお、発表に当たっては、混乱を招かぬよう場所を指定するとともに発表時刻を予告する。

(3) 発表要領

住民に対する広報は、災害(事故)現場における二次災害及び活動による危害防止を重点に、拡声器等を活用して行うこととし、報道関係者に対する広報は、広報担当者が専従して行うものとする。

(訓練)

第13条 この要綱の円滑な運用を図るため、関係機関の協力を得て適時集団救急事故発生時の総合訓練を行うものとする。

この訓令は、公布の日から施行し、平成13年7月1日から適用する。

別表第1(第6条関係)

救急現地本部の組織及び指揮系統

画像

別表第2(第6条関係)

救急現地本部所掌事務

(班)

所掌事務

庶務班

(総務課)

1 気象情報及び災害情報の収集に関すること。

2 災害発生地区市町との連絡及び通信統制に関すること。

3 応援出動要請(隣接市町消防機関)に関すること。

4 非番の消防職員の召集に関すること。

5 ラジオ、テレビ、新聞等報道機関との連絡及び相互協力に関すること。

6 食料及び飲料水の補給に関すること。

7 本部長特命に関すること。

8 その他救急活動の統括事務に関すること。

警防班

(警防課)

1 救急医療品及び資器材の調達に関すること。

2 交通規制・治安維持の要請に関すること。

3 傷病者の収容状況の把握及び救急事故等の関係機関に対する報告に関すること。

4 消防団に関すること。

5 その他救急活動に必要な事項

調査班

(署長の指示したもの)

1 特殊救急事故の原因及び被害状況の調査に関すること。

2 傷病者の傷病程度の概況調査及び搬送先病院の確保に関すること。

3 死亡者の身元調査関係機関等への連絡に関すること。

4 救急現地本部との通信連絡に関すること。

5 災害写真の撮影収集及び記録の作成に関すること。

6 その他救急活動に必要な事項

消防隊

1 火災の警戒、火災の出動に関すること。

2 本部長の特命事項に関すること。

救助隊

1 被害者の救出、救助に関すること。

2 現場の警戒及び避難誘導に関すること。

当務救急隊

応急救急隊

1 救急業務に関すること。

消防団

1 救出救助活動に関すること。

2 現場の警戒及び避難誘導に関すること。

3 火災の警戒、火災の出動に関すること。

別表第3(第6条関係)

装備及び資器材

種別

数量

天幕

2

エンジンカッター

1

エアーカッター

2

チェンソー

1

チルホール

2

携帯用発電機

2

携帯投光器

3

無線機

3

応急担架

5

患者用毛布

20

レサシテーター

4

空気呼吸器

6

予備空気ボンベ

10

予備酸素ボンベ

5

止血帯

10

梯状副子、その他骨折処置用器具

各5

消毒ガーゼ及び消毒薬

一式

三角巾

50

巻軸包帯

各20

現地本部標識

1

その他救急救助活動に必要な資材

一式

画像

天草広域連合集団救急事故の救急救護活動要綱

平成13年7月2日 消防長訓令第21号

(平成13年7月2日施行)