○指令課の業務に係る情報提供指針
平成18年5月30日
消防長訓令第9号
第1 目的
火災・救急等災害事案発生時、指令課の業務における警察、裁判所、弁護士会、報道及び住民からの各種照会や問い合わせに対し、情報提供を行う際の説明責任と個人情報の保護について、必要な事項を定めることにより、効率的かつ適正な消防業務の遂行に資することを目的とする。
第2 照会の種別
照会とは、電話や来庁による口頭照会及び文書による照会のうち、次に掲げるものをいう。
1 住民からの電話等による照会
2 報道機関からの電話等による照会及び取材
3 警察、検察からの照会
(1) 刑事訴訟法に基づく資料提出要求
(2) 電話等による照会
4 裁判所からの照会
刑事訴訟法、民事訴訟法に基づく資料提出要求
5 弁護士会からの照会
弁護士法に基づく資料提出要求
6 消防職員の個人情報に関する問い合わせ
第3 対応要領
指令課員が業務上知り得た情報は、地方公務員法第34条第1項「秘密を守る義務」、天草広域連合個人情報保護条例、天草広域連合情報公開条例を根拠とし、「住民のプライバシーの保護」を基本としながらも積極的に情報公開に対応するものとする。
以上のことを踏まえながら照会種別ごとの対応においては、必要に応じ、関係所属と調整を図りながら行うこととし、その対応及び電話による照会対応については、次によるほか別表「照会対応時の基本方針」のとおりとする。
1 住民からの電話等による照会
(1) 電話等による照会
火災・救助・救急の問い合わせや傷病者搬送先医療機関の照会については、当該災害関係者の家族、勤務先等で身元を証言する者に限り回答する。
※〔家族等の身分の確認方法〕
電話での照会の場合は、住所、氏名、連絡先を明らかにさせたうえで、親族及び関係者しか知りえないような情報の有無等から、身分関係のあることを確認する。
傷病者が搬送された情報の入手経緯、傷病者の生年月日、どんな服を着ているか、どこに行くところであったか等を確認する。
ア 災害事案等に関する回答範囲は、次によるものとする。
(ア) 災害指令場所
(イ) 覚知時間
(ウ) 鎮火時間
(エ) 搬送機関
イ 救急・救助事案(発生中、処理後)に関する回答範囲は、次によるものとする。
(ア) 119番受信概要
(イ) 災害指令場所
(ウ) 覚知時間
(エ) 搬送機関
(2) 一般住民からの電話等による照会
災害関係者以外からの火災・救助・救急の問い合わせや傷病者搬送先医療機関の照会については、次により対応する。
ア 通報者に係る個人情報及び傷病者の搬送機関及び傷病状態等については、原則として回答しない。
例)通報者へのお礼等の希望は、内容を検討し当人の承諾を取った後回答する。
イ 火災・救助事案に関する災害情報等のうち、客観的事実であり(一般住民に周知され得るものに限る。)プライバシーに抵触しない事項については回答できる。
ウ 救急事案に関する情報のうち、次の事項については回答しない。
(ア) 屋内で発生した救急事案のうち、傷病者個人が特定され得る情報(傷病者の氏名、住所、電話番号等)
(イ) 刑事事件と推定される事案のうち、当事者の個人情報(個人が特定され得る氏名、住所、電話番号等。以下同じ。)に関するもの
(ウ) 未成年者の非行と推定される事案のうち、当事者の個人情報に関するもの
(エ) 災害時要援護者についての情報のうち、当該者の傷病の内容に関する情報
エ その他、当課では回答できない救急活動に関する詳細情報については、担当課及び消防署所と協議する。
2 報道機関からの電話等による照会及び取材
報道機関による報道は、国民の「知る権利」に奉仕するため、報道の自由は憲法の保障の下に十分尊重されており、また個人情報の保護に関する法律においても、第35条第2項では主務大臣の権限行使の除外や、同法第50条では個人情報取扱事業者の義務規程を適用除外されているところである。このことからもできる限り取材に応じ、住民に正確な情報を提供することが望ましいが、公表する情報の中には個人のプライバシーに関するものも含まれており、その取り扱いに十分配慮するものとする。
(1) 一般的留意事項
ア 誘導的な質問に対しては、相手に乗せられることなく、客観的事実のみを回答し、推定事項は回答しないものとする。特に、犯罪及び捜査の要素が大きい事案及び死者発生事案については慎重に対応するものとする。
イ 回答できない情報については、明確にその理由を示し、相手の理解を求めるものとする。
ウ 通報者の氏名、電話番号等については、地方公務員法上の守秘義務や住民のプライバシー保護の観点から回答しない。
エ 未成年者に係る照会事項は、本人であることが推知されないようにする。
オ 取材記者が社名、氏名等を名乗らない場合は回答しないものとし、照会内容等で不審と思われる場合は、一旦電話を切り、こちらから電話をかけ直して回答するものとする。
(2) 回答範囲
火災・救助・救急事案等に関して、回答できる範囲は、概ね次のとおりである。ただし、通報者に係る個人情報は原則として回答しない。
ア 火災・救助事案等に関する取材の場合
現場広報による情報内容と同様の事項を取材してくる場合のように、当該照会事項については比較的に不特定多数に周知されている事案も多く、原則として客観的な事実確認ができる場合は回答する。
災害情報、活動情報関係で回答できる事項は次のとおり。
(ア) 時間経過(指令から鎮火まで)
(イ) 罹災建物の所在、名称、代表者、構造、階層、延面積、用途
(ウ) 焼損面積、焼損物件(現場から報告があったものに限る。)
(エ) 所轄署所名、出動種別、消防隊の活動
(オ) 出火場所(指揮隊から報告があったものに限る。)
(カ) 火災原因(確定している場合)
(キ) 搬送機関
(ク) その他必要事項
イ 救急事案に関する取材の場合
特にプライバシーに係る事案が、火災・救助事案と比較して多いので慎重に対応することとし、回答できる事項は次のとおりとする。
(ア) 出動した救急隊名
(イ) 指令年月日・時間、現場到着時間、病院到着時間
(ウ) 出動場所(○○市○○町○○番地付近)
(エ) 傷病者数
(オ) 年齢・性別(○○歳代の男性・女性)
(カ) 搬送機関
3 警察、検察からの照会
(1) 刑事訴訟法に基づく資料提出要求
刑事訴訟法第197条第2項の規定に基づく文書(「捜査関係事項照会書」)による照会は、法的根拠や実態等を勘案して次により対応するものとする。
ア 照会事案に対しては、原則として別表の「照会事項」として要求されたものについてのみ回答するものとする。
イ 録音テープ等については、刑事訴訟法第197条第2項に基づき文書により照会されるものとし、取扱上の注意事項等を記載し決裁後、対応するものとする。
(2) 電話等による照会
電話や来庁により照会があった場合は、犯罪捜査上の必要性等により、次の事項に留意して対応するものとする。
ア 客観的事実のみを回答し、推定事項は回答しないものとする。
イ 不審と思われる場合は、一旦電話を切り、こちらから電話をかけ直して回答するものとする。
ウ 通報内容等個人のプライバシー等に抵触すると思われる場合や善意の第三者に対して不利益を及ぼすと予想される事項については回答しない。なお、照会者の理解が得られない場合は、文書による照会を求める。
エ 回答の可否が判断できない場合は、即答を避け、上司に報告して指示を求めるものとする。
4 裁判所からの照会
刑事訴訟法第279条、民事訴訟法第186条の規定に基づく文書による照会については、前記3(1)に準じて対応するものとするが、民事的な問題に関与する場合には、具体的に検討し対応するものとする。
5 弁護士会からの照会
弁護士法第23条の2の規定に基づく弁護士会からの文書による照会については、前記3に準じて対応するが、次の事項に留意し対応するものとする。
(1) 弁護士による訴訟の資料収集のためなど、個人的な照会については、原則として回答しないが、所属する弁護士会を通しての照会については具体的に検討し対応するものとする。
なお、弁護士個人からの照会及び問い合わせについては、別表の「一般住民」を準用して対応するものとする。
(2) 回答については、民事的な問題に関与することのないよう留意するものとする。
6 対応職員の個人情報に関する問い合わせ
災害に対応する指令管制業務は、消防機関として業務上実施していることから、原則として個人名を付する必要はなく、また本人の同意なくして住所、電話番号等の個人情報を回答するなど、職員の個人的なプライバシーを侵すことのないよう留意すること。
ただし、通報者や業務上関係機関との対応上、個人名を付する必要が生じた場合は、この限りではない。
なお、消防職員の住所・電話番号等の問い合わせについては、原則として回答しないものとする。
ただし、問い合わせの内容から判断して、必要と思われる場合は、本人から回答させる等、柔軟に対応すること。
第4 事務処理要領
文書による照会、口頭による照会又は緊急の事案の対応にあっては指令課各係が相互に協力して行うものとする。
第5 その他
口頭による照会のうち、重要かつ特異な事案(例、照会者の理解が得られなかった場合、住民からの苦情等によるもの)と認められるものについては、速やかに指令課長に報告するとともに、指示等を受ける。
附則
この指針は、平成18年5月30日から施行する。